桃林鐵路こと林口線
いやはや、林口線、何ともユニークな路線でした。
ローカル線マニアの方なら結構楽しめそうです。ただ、旅情というジャンルの面白さではないので、素人には正直お勧めできませんが…。
朝6時半過ぎに桃園駅に行ってみると、いささか古びた平屋建ての駅舎、郊外都市っぽい駅前、行き交う人々と車とバイク…平日の朝の駅前は台湾でもそんなに変わりません。
駅に向かって左側に「桃林鐵路」の看板があります。そちらに歩いていくと、駐車場を横切った奥に簡素なホームがあって、2両編成のディーゼルカーが停まっていました。たくさんの高校生が、その列車に向かって歩いていきます。
係員や高校生たちの様子を見ると、この列車、どうも本当に無料のようです。私も安心して乗り込みました。冷房付きですが、高校生で随分と混雑していて、効きはいまひとつでした。運転室の後ろの壁には「日本車両1998年」の銘板が付いています。
6時55分、ほぼ満員で発車しました。
列車の速度は何ともゆっくりです。天気はどんよりとした曇り空…何となく地味な街の景色が、尚更に埃っぽく見えてしまいます。
一つ目の駅は学校の前に作られた仮設駅です。ここで大半の高校生が降りていきました。残っているのは別の学校の生徒たちでしょう。(ジャージの色が全く違うので…)
ロングシートに座って身体を少しひねり、外の景色を眺めます。やはり曇天で気分は今ひとつですが、それでも、日常とまるで離れた風景の街中を行くローカル列車…やはり早起きして乗ってみて良かったと思います。
終点の一つ手前で残りの高校生も全員下車しましたが、車内にはまだ、おじさんおばさん達が20人ほど乗っていました。終点の長興駅に着きましたが、みんなそのまま車内に留まっています。降りたのは私のほかは数人でした。
Wikipediaの「林口線」の中文版を見ると、長興駅では到着後に数百メートル先まで回送されて待機し、折り返しの発車時刻になるとホームに戻ってくる旨が書かれています。(駅の横に交通量の多い踏切があるので、それを閉じっぱなしにしないための措置です)
実際に列車が去り、整理係と私だけが立つホーム。列車は先の線路上にぽつんと停まっていました。折り返し列車の時刻(7時35分)になると、その列車がおもむろにホームに入ってきます。乗り込むとすぐ発車です。車内には、列車ごと先まで回送されて折り返してきた人たちが、そのままの姿で座っていました。
ゆっくりとした速度で桃園に向かっていく列車…もう高校生の姿はありませんが、それでもロングシートが3分の1ぐらいは埋まっています。
なるほど…無料だからかな…??
一日2往復で土日は運休という超閑散ローカル線ですし、ずっと街中を走る路線ですから、常識的に考えれば使い物になるとは思えません。でも、ここは無料ですから、交通手段としては十分に選択肢になり得るのだと思います。(もし、自宅の近所にこんな鉄道路線があったら、私だってたまには使うかも知れません)
それに、この列車は冷房車です。終点でも降りずにただ単に往復しただけの人は、別に鉄道ファンというわけではなく、「無料で冷房つきの暇潰し空間」として利用していたのかも知れません。
東京近郊で例えるなら…もし高島貨物線に無料の旅客列車を走らせたらどうなるでしょうか…??
そんな、ちょっと日本では考えにくいような社会実験を、見ているような気がしました。
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